コラム・オピニオン

コラム1:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の成立と男女の意識・行動の改革


2015年9月

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立し、官民あげて女性を活用するという新しい道筋ができました。法律の成立により、女性のキャリア構築がさらに推進されることが期待されています。このような法律が制定され、キャリア構築を後押しする制度が整いつつある社会情勢の中、女性自身の意識改革や行動改革も必要と考えますが、その際壁となるものは何でしょうか。それは家庭の家事・育児のほとんどを女性が担っていることもあるのではないでしょうか。家事・育児を代わりに担ってくれる人がいない、または1人でこなしている状況では、積極的にキャリア構築に挑戦できないのは当然です。それだけ家庭のこと、とりわけ子育てはキャリア構築においては大きな障壁となります。それだけ子育ては責任が重い仕事であるということも言えるでしょう。

職種によっては、子育てと両立できる職種もあると思いますが、民間企業の管理職ともなると、子育てとの両立は厳しいものです。そこでパートナーである夫の協力は必須となってきますが、多くの男性は長時間労働と出世競争から、家事・育児への積極的な関与は難しい状況にあります。

女性が家事・育児をこなしながら職業生活において活躍するためには、いくつかの戦略があります。ここでは、女性の家事・育児の負担を減らす代表的な方法を挙げます。
① 夫に仕事の関与する時間を減らしてもらい、家事・育児を担う時間を増やしてもらう
② 夫が仕事に関与する時間を変えずに、親族に家事・育児をサポートしてもらう
③ 夫が仕事に関与する時間を変えずに、家事・育児をサポートする人を雇う
①については、夫婦のワーク・ライフ・バランスを保つためには、理想的な戦略です。ただし、夫である男性の職業生活における活躍(昇進など)は、関与する時間が変わらないケースに比べて低下する可能性があります。
②については、親族が近くに住んでいる方に限定された戦略です。
また、③については、批判的な意見もあるかもしれませんが、夫婦でお互いの職業生活での活躍を望むのであれば、必須となる戦略ではないでしょうか。

女性が仕事と家庭の両立に消極的になる要因としては、家事・育児の全てを女性が担うということへの負担が大きい上に、「家事や子育てを他人に頼むこと」に対する否定的な意識があるからではないでしょうか。平成23年度の経済産業省「家庭生活サポートサービス産業についての調査事業」によると、家事代行サービスを利用しない理由として「他人に家に入られることに抵抗がある」とする回答が4割超、また「他人に家事・育児等を任せることに抵抗がある」とする回答が2割超みられました。

この結果でもわかるように、他人が家庭に入ることや子育てを他人に任せることに否定的な女性は少なくありません。しかし、そこにこだわっていると、子育てをしながら仕事でも活躍することは難しいという現実があります。確かに子育ては大変重要なことであり、責任の重いことですが、「愛情を持って育てているならば、信頼できる他人に任せる時間があっても、大丈夫」と意識を変えられるかどうかが鍵になると思います。

また、仮に女性自身が家事・育児のサポートを依頼することに積極的であっても、夫や夫の親、女性の親など周りの家族が否定的な見解を示してしまうと、それに抵抗することは案外エネルギーがいるものです。周りの家族の意識改革も必須ではないでしょうか。


<参考資料>

  家庭生活サポートサービス産業についての調査事業(平成23年度 経済産業省)



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