コラム・オピニオン

コラム6:被害者に特有の感情について


2015年10月

交通事故や犯罪の被害に遭うと、それまでの性格が変わってしまうことも少なくありません。被害者は、まず第一に激しい「怒り」を感じています。激しい怒りの矛先は、加害者や社会に向かうこともありますが、自分に向かうこともあります。自分がこうしなかったから家族が事故に遭ってしまったとか、ああすればよかったなど、事故は自分とは関係がないのに自分を責めてしまったりします。

また、これまで信じていた社会が信用できなくなり、人も信用できなくなることが多いようです。社会や人に対する信頼が根本から崩され、孤独感や不信感を持ちやすいことが指摘されています。

重度の障害を負ってしまった場合などは、自分の身体の変化に適応することは難しく、介護が必要な場合には、家族に大変な負担がかかります。交通事故で重度の障害を負われた方を介護されている方にお話を伺うと、多くの方が事故のショックから回復する間もなく介護に追われて「息をつく暇もない」、「自分の時間が持てない」、「目が離せないので外出すらできない」といった差し迫った状況を訴えらえます。お子さんを介護していらっしゃる親御さんであれば、親亡き後の心配も深刻です。

事件や事故に遭われた方を支援する場合も情報が少なく、被害者の方の激しい怒りに驚いてしまったり、感情の起伏に上手く対応できなくなったりするなど、支援することに困難さを覚えることも少なくありません。支援する側も被害者特有の心理について知っておく必要がありますが、そのような情報はまだ少ない状況です。

内閣府交通事故被害者サポート事業では、交通事故被害者の精神的支援に向けた事業が行われていますが、被害者や支援者にとって参考となる資料が掲載されていますので、紹介します。少しでも皆様の精神的支援につながりましたら幸いです。

社会福祉法人全国社会福祉協議会のウェブサイトです。各都道府県の社会福祉協議会の一覧が掲載されています。お近くの社会福祉協議会にお問い合わせください。


<参考資料>

事件や事故の被害者の方に特有の症状については、内閣府「交通事故によってご家族を亡くされた方へ(改訂版)」に詳しく記載されています。ぜひご覧ください。

  「交通事故によってご家族を亡くされた方へ(改訂版)(PDF)」


事件・事故被害者への精神的支援については、内閣府「交通事故被害者サポート事業」ウェブサイト掲載の平成26年事業報告書(第3章p66~70 滋賀県立精神保健福祉センター所長 辻本哲士氏のご講演要旨)に詳しく記載されています。ぜひご覧ください。)

 滋賀県立精神保健福祉センター所長 辻本哲士氏によるご講演要旨「事件・事故被害者への精神的支援」(平成26年 内閣府「交通事故サポート事業」事業報告書 第3章p66~70)(PDF)


交通事故対策機構(NASVA)では、交通事故による重度後遺障害者の支援を行っておりますが、介護者亡き後の問題についての情報提供を行っています。

  自動車事故による重度後遺障害者・家族が 「介護者なき後、親なき後」に備えるための情報



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